天疱瘡の病態解明に向けて Dsg3反応性T細胞の役割

摘要

尋常性天疱瘡(PV)は，重層扁平上皮に発現する細胞間接着分子デスモグレイン3(Dsg3)に対する&B抗体により生じる重篤な自己免疫疾患である.病的自己抗体産生機序の解明には，B細胞からの抗体産生を制御するDsg3反応性ヘルパーT細胞の解析が不可欠であるが，従来のヒトT細胞研究では分離·解析された丁細胞の自己抗体産生への関与を生体内で評価することが不可能であった.近年，著者らは天疱瘡モデルマウスを利用して，抗Dsg3抗体産生を誘導できるT細胞の病原性をin vivoで評価するシステムを確立した.本評価システムを利用して，従来病因的と考えられていたDsg3反応性T細胞には病気を起こすT細胞と起こさないT細胞がいるという，病原性の差異(pathogenic heterogeneity)の概念を明らかにした.また，1種類のT 細胞が複数のB細胞からの抗体産生を制御できるという事実も明らかにした.本システムは今後の免疫学的検討の基礎となりうると考えられる.