技術トピックス／交通：パンタグラフ接触力による電車線設備の診断

摘要

電気鉄道では、車両への電力供給方式として第1図に示すような電車線とパンタグラフの組み合わせが広く採用されている。電車線で最も重要な部位であるトロリ線は、パンタグラフの摺動により摩耗する。トロリ線は10kN～20kNの比較的高い張力で架設されているため、摩耗が進行して許容応力を超えると断線する。 そのため、電車線のメンテナンスで最も重要な項目は、トロリ線摩耗管理であると言っても過言でない。 そこで、トロリ線の摩耗や高さ等を営業速度で車両上から測定する電気軌道総合試験車（以下、試験車と記す）が月に数回走行している。 そのデータは保守担当者に送られ、日々の保全業務に活用されている。一方、トロリ線はパンタグラフと直接接触するものであるため、その架設状態は接触性能に大きな影響を与える。 パンタグラフがトロリ線を高速で摺動すると、電車線とパンタグラフの間に作用する接触力は電柱間隔やバンガ間隔等、様々な周波数で変動する。接触力の大きな変動は安定した集電を阻害するため、接触力を測定、評価することは、集電の品質を把握するために非常に重要である。 さらに接触力波形は電車線の架設状態の影響を強く受けていると推走されるので、測定した接触力波形から電車線の状態診断が可能であると考えられる。 本稿では、電車線状態を診断するための電車線検測技術と、接触力測定技術および接触力波形を電車線の状態診断に応用するための最近の研究について紹介する。