自動車産業に貢献する非破壊検査技術⑤：共振検査法による部品の強度検査－真に強度と相関性の高い非破壊検査手法

摘要

非破壊検査の歴史は古く第1次大戦中にドイツで複葉航空機の木製支柱の検査、砲弾の薬筴の検査等に使われたのが初めと言われている。その目的は、①製造技術の改良；②製造コストの低減；③信頼性の向上 に大別できる。非破壊検査には必ず目的があり、目的に沿った検査法が選ばれる。破壊しないと測定できない性能である強度や疲労強度などを検査する事は自動車部品·航空機部品では極めて重要である。このように強度や疲労強度を低下させる欠陥（以後、構造的欠陥と呼ぶ）の検査には、強度を低下させる可能性の有る傷を検出する非破壊検査法が広く使われている。傷があると、傷から割れが発生·伝搬し、製品の本来の強度性能を低下させる可能性があるためである。しかし、可能性はあっても、非常に小さな表面傷は実際に構造的な欠陥にならないことも多い。すなわち、傷に着目する非破壊検査から得られる情報は構造的欠陥を検出する目的に対しては間接的であるため、得られた傷の情報が製品の強度をどの程度低下させるかを把握しておく必要がある。近年の非破壊検査はいかに小さな傷を見つけるかを競う傾向にあり、実際小さな傷が強度にどのように影響するかについては検証が不十分であることも多い。現場の品質検査技術者はこのような矛盾に気がついているが、実際は仕様どおりの小さな傷を見つけることを目指しているように見える。この記事は現在のこの風潮に一石を投じると共に、解決策として破壊強度·疲労強度等の構造的な欠陥と相関が高い非破壊試験法として、共振検査法を提案するものである。