金属遮蔽された爆発物の非破壊測定法の開発

摘要

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件以降、アメリカを中心にホームランド·セキュリティーの重要性が謳われている。アメリカだけでなく、アメリカの同盟国と見なされている国でもテロの危機は高まり、2004年3月11日のスペインの首都マドリードでのスペイン列車爆破事件では、190人以上の死者が出ている。このような状況で、数kg単位の爆発物を含む有害物質の非破壊検査法の開発が世界的な研究課題の一つである。例えば、港湾において輸入されたコンテナ、空港、港湾、発電所等に出入りするトラックの荷台の非破壊検査が具体的な課題である。しかも、爆発物は検知を避けるために意図的に金属で厳重に隠蔽されている場合が考えられる。しかしながら、金属で厳重に隠蔽された有害物質の検知、ましてや隠蔽物質の種類の同定は、X線撮影等の従来技術では事実上不可能であった。原子力研究開発機構（以下、原子力機構）を中心とする研究グループは、ガンマ線をプローブとし原子核共鳴蛍光散乱によって物質を非破壊で検知する技術の開発をすすめている。この技術は次世代の原子力技術の一環として研究されてきたものであり、加速器、レーザー、放射線測定、原子核物理学の複合的な技術である。