日本で望まれる機械安全に関する法規制及び社会制度の考察－根拠に基づく安全理論（EBS）の観点から

摘要

日本の強みは、鉄鋼·自動車·化学などの分野で質の高い安全管理と生産技術を達成していることにある。したがって、この“現場力”を基盤に置いた上で、安全の先進国と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切に活用すれば、日本の現場力に基づく新しい枠組みの安全技術や社会制度を構築できる可能性がある。本研究では、以上の観点から、今後の日本で望まれる法規制及び社会制度のあり方を著者らが提案している根拠に基づく安全理論（EBS：Evidence-Based Safety）の成果も踏まえた上で検討した。その結果、今疎の日本で望まれる法規制及び社会制度では、（a）現場力の活用とともに、（b）経営者や設計者に対する欧州機械安全の基本理念の普及促進、及び（c）再発防止から未然防止、件数重視から重篤度重視への戦略転換と想定外に対する対策が重要と推察された。また、実際の機械の労働災害防止戦略では、①ISO12100に定めるリスク低減戦略、②モジュール方式による適合性評価と適合宣言に関する情報伝達を目的としたマーキング、③マーキングの情報に基づく機械の使用段階での妥当性確認、④機械の設計·製造段階への災害情報のフィードバックが特に重要と考えられる。