垂直視差による眼球位置情報の変化が頭部方向の制御に及ぼす影響

摘要

私たちは普段，主に眼から入力される視覚情報を使って自分の周囲の空間構造を認識しながら生活している．周囲の空間構造，物体の配置を知るということには，対象の自分に対する方向を知るということが含まれる．対象の方向を知るための方法は大きく分けて2つある．1つは頭部および眼を動かす筋肉の動きから頭の位置を知る直接的な方法，もう1つは網膜に映る視覚情報のみから頭部方向を知る間接的な方法である．ヒトは通常は主に眼筋の動きから頭部方向を判断していると考えるのが自然であるが，暗黒中の静止した光点が動いて見える自動運動現象などかららもわかるように，眼筋情報だけで視覚的情報がなければ周囲の空間を正しく把握することはできない．視覚情報は眼筋の動きによる方向の推定を補助する働きをしていることがわかる．