場の共創出メカニズムに関する基礎的研究－間合い生成時に見られる多様なエントレインメントについて

摘要

本研究では，場の共創出の原理に関する知見を得ることを目指す．その際，従来の自己組織化現象の理論において，引き込み（リズムの同期現象）がこの現象を説明する原理として，重要視されていることに着目し，無意識的な身体行為の同調現象であるエンレインメントと場の共創出の関係を調べることにする．ただ，場の共創出は，自身の内面で起きる現象であるため，外側から観察することが極めて困難であることが問題となる．そこで，間合い（本論文では，間合いは，時間的な間（ま）と空間的な間（ま）の両方の意味を含むと考えることにする）に着目し，この問題に接近することにした．つまり，場の共有により，間合いが互いの身体を介して表現されるのではないかと考え，外部から場を限定したとき，つまり，予め場が共有されているときの間合いと，外部から場を限定しないとき，つまり，予め場が共有されておらず場の共創出が起きるときの間合いのそれぞれについて，エントレインメントとの関係を調べ，場の共創出とエントレインメントの関係について明らかにする．さらに，エントレインメントと間合いに着目して，遠隔地間で場の共創出を支援する手法について検討し，それに必要な要件を調べることにする．本論文では，以上のような観点から，著者らが，これまでに，剣道ロボットシステムや協調ゲームシステムを用いて行ってきた間合いとエントレインメントに関する研究内容をまとめ直し，場の共創出メカニズムについて考察したので，以下に報告する．