IEC規格に則った小型制御基板へのESD試験に関する検討

摘要

筋電義手モーターの制御に用いるバッテリー駆動の小型制御回路基板に対し，国際電気標準会議規定の静電気放電（Electrostatic discharge: ESD）に対する電子機器のイミュ二ティ試験（IEC61000-4-2）を，規格に準拠して行った．同基板を水平結合板上に設置または垂直結合板の近傍に配置して，これらの結合板へのESDガンによる接触放電を50ms毎に連続999回行うバースト間接放電試験を±4kV及び±8kVの試験レベルで各3回行い，パルス幅変調（Pulse Width Modulation: PWM）波形（周期：20ms，パルス幅：750μs）をディジタルオシロスコープ（帯域：1.5GHz，サンプリング周波数：8GHz）により観測した．観測波形を計算機に取り込みパルス幅の統計解析を行った結果，ESDノイズのPWM信号への影響は却こ次の2種類のパルスに起因することがわかった．すなわち，① ESDノイズそのものに起因するPWMパルスのパルス幅外に誘導された2μs以下の短いパルス（Type Aと呼ぶ），及び，② ESDノイズが直接にPWMパルスに重畳し，本来の時間幅750μsのPWMパルスが数十～数百μsの時間幅を有するパルスに分割されてしまう場合（Type Bと呼ぶ）である．また，① ±4kVの放電では時間幅2μs以下のType Aのパルスの発生が主流であるのに対し，±8kVの放電ではType Aに加えType Bのパルスも多数存在すること，②正極性放電と負極性放電の双方の場合おいて時間幅十～数百μsのType Bのパルスが観測されたこと，③垂直結合板への接触放電よりも水平結合板への接触放電の方がパルス幅に対する影響が大きいこと，などもわかった．