ESDガンのグラウンドへの接触放電に対する放電電流の推定

摘要

IEC（国際電気標準会議）では，人体ESDを模擬した耐性試験法（IEC61000-4-2）において，静電気試験器（ESD ガン）の接触放電に対する放電電流波形を規定し，伝達インピーダンスを1Ωとした電流検出変換器（以後ターゲット）への波形校正を要求している．しかしながら，ESDガンのターゲットへの注入電流が，そのまま実際の試験機器（EUT）に放電されるとは限らない．本研究では，ESDガンのEUT筐体への接触放電に対する放電電流波形が筐体サイズとの関係においてターゲットへのそれとどの程度異なるかを検討した．まず，ESDガンのターゲットへの接触放電に対する放電電流波形はESDガンの先端電極近傍に配置した磁界プローブの出力電圧波形から推定できることを確認し，つぎに，EUT筐体を模したグラウンド板（1.5m × 1.5m）と3種類の金属円板（直径：80，50，30mm），実際のEUTとしてバッテリー駆動のラップトップPC（B5サイズ）表面カバーの金属円環（内径：44mm，外径：52mm）への接触放電に対する放電電流波形をそれぞれ推定した．その結果，グラウンド板への放電電流の推定波形はターゲットへの放電電流の測定波形と一致すること，金属円板に対しては放電電流の立ち上がり波形は円板サイズに拘わらずターゲットへの放電電流波形に類似するものの，立ち下がり波形は全般に低く，電流ピークも小さいが，それは円板サイズと共に上昇し，直径30mmで85％，80mmではほぼ100％に達していること，ラップトップPCでは接触放電の金属サイズが小さいにも拘わらず，放電電流波形は意外にもターゲットへのそれと概ね同じであること，などがわかった．