3芯VVFケーブルのアース線が電力線通信信号の伝送特性に与える影響

摘要

電力線通信は屋内配電線を伝送媒体として使用するが，これまで検討されてきたのは，主に2導体のケーブルの伝送特性である．しかし，洗濯機や冷蔵庫等，家電機器にはアース線を必要とする機器があり，そのためにアース線と一体となった3導体のケーブルが使用されることもある．3導体のケーブルの場合，信号が伝搬しないアース線の存在が伝送特性に影響を与える可能性があり，検討を行う必要がある．本報告では，屋内配電線に使用される3導体で構成される3芯VVFケーブルについてアース線が伝送特性に与える影響を検討している．検討では，通常の基準に従って，中心導体がアース線と考えて，まず，3芯VVFケーブルの線路定数を短いケーブルを用いた測定と有限要素法を用いた計算より求めている．次に，その結果に基づきケーブルの等価回路を求め，そして，この等価回路に基づいて6ポート回路網のパラメータを求めている．最後に，この6ポート回路網の縦列接続で3芯VVFケーブルを表し，信号の伝搬特性を求めている．検討の結果3芯VVFケーブルの単位長当りの抵抗とインダクタンスは理論値とほぼ一致すること，比誘電率とtanδは2芯VVFとほぼ同じであること，伝送特性の解析値と測定値の傾向はほぼ一致すること，アース線の終端条件は伝送特性に殆ど影響を与えないこと，アース線の存在により，2芯VVFの場合に対して周期的な損失変動が生じるが，その変動は1dB以内であり，全体の伝送特性に与える影響は小さいことがわかった．