耐摩耗性を向上させた新型弁座：高性能弁（日立ハイパーバルブ：HHV）の開発

摘要

火力·原子力発電所の弁をはじめ、多くの弁には、弁座部の腐食、摩耗といった劣化を抑制する為、弁箱·弁体の弁座部にCo基合金（主に、ステライト6）を肉盛しているが、その肉盛部が、エロージョンにより、減肉し、弁体·弁座のエロージョンシールド、シート部としての機能が低下し、その結果、弁体·弁座の取替が必要となっている。 このため、弁の保守性·信頼性の向上の観点から、弁体·弁座のCo 基合金の耐エロージョン性向上が求められるようになってきた。 弁座のCo基合金のエロージョン損傷については、種々の文献が、高温の溶存酸素雰囲気下において、Co基合金を構成する網目状の共晶炭化物と樹枝状晶（デンドライト：基地部(Matrix)）のうち、網目状の共晶炭化物の腐蝕損傷を起点として発生する事象であるとしている。 そこで、我々は、Co基合金の耐エロージョン性を向上するため、Co基合金の代表的な化学組成RCoCr－A（AWS規格）の化学成分範囲内で、共晶炭化物を粒状·塊状にした合金を製作し、弁座に加工して、弁座としての必要な諸特性の評価を行った（第1図）。その結果、この新しい弁座は、高温て高溶存酸素雰囲気下の耐エロージョン性能に優れるばかりではなく、Co溶出量も、従来の弁座に比べ非常に少なく、原子力発電所の定検従事者の被ばく低減にも有効であることが判明した。ここでは、日立製作所が開発した新しい弁座の概念とその特性について述べる。