AZ31マグネシウム合金板の圧延条件による機械的性質および集合組織の変化

摘要

近年省エネルギーに代表される環境問題に対し，軽量かつリサイクル性に優れるマグネシウム合金が注目されている。 しかし，マグネシウム合金は常温での成形性が悪く，冷間での塑性加工が難しいことから，板材の成形品はほぼ皆無に近い。 今日使用されている製品のほとんどはダイカストあるいはテクソ成形法によるものであるが，それらの製品の中にはプレス成形品に変えられると思われるものが多く存在している。最近の工業界ではこの点に注目し，板材,特に薄板の要求がとみに高まってきている。 しかし，国内においてはマグネシウム圧延板の量産を行っているところは少なく，供給状態についても数社に限られており，鉄鋼やアルミニウムのような制御圧延等の塑性加工に有利な性質を持つ圧延材などの系統的な研究はほとんどされていない。 そのために，市販板材は企業間あるいはロット間で組織や機械的性質に大きなばらつきがあり，常に品質の安定した材料を得ることすらできないのが現状である。 それ故に，今後のマグネシウム合金板の研究は，材料の安定した供給および実用化に向けて必要不可欠なものである。 本研究では，展伸材として最も多く使用されているAZ31マグネシウム合金を鋳造材から圧延を行って板材にし，その間の圧延工程や熱処理の組合せが機械的性質や集合組織にいかなる影響を与えるかについて調ベ，良好で安定したAZ31マグネシウム合金板を得るための加工および熱処理条件を検討した。