Al-Li系合金の破壊靭性-破壊形態-引張特性の関係

摘要

本研究では，Al-Li系2090，2091および8090合金板の各時効処理材について，板厚（S）方向および圧延（L）方向の引張試験および破壊靭性試験をそれぞれ行い，強度-破壊靭性特性を明らかにした。 さらに，破壊形態と破壊エネルギーを組合せた解析を基に，破壊靭性の推定と破壊の支配要因についての考察を行った。得られた結果を要約すると以下のとおりであろ。 （1）S方向の引張特性をL方向と比較して評価した。前者の強度·伸びは後者より低く，とくに2090は顕著な異方性を示した。 （2）S-L方向に比べてL-T方向の強度-破壊靭性特性は高位にあり，中でも2091および8090は航空機材料としての要件を満たす特性を示した。L-T方向では縦割れによるデラミネーション靭化の効果が認められた。 （3）S-L方向の破面にほ粒界破壊（IGF）と粒内破壊（TGF）が混在し，それぞれが占める割合f_i, f_tを破面変位の計測·解析により決定した。 （4）f_i, f_tと引張試験の破壊ひずみエネルギー密度を関係づけて破壊靭性の推定を行い，実測値との良好な相関性を見出した。 （5）本合金の破壊は，粗大な介在物粒子の平均間隔を特性距離として起きるものと考えられた。