A356アルミニウム合金鋳物の組織と引裂靭性に及ぼす高温溶体化処理の影響

摘要

A356（刀S－A以CH）は，代表的な熱処理型鋳造用アルミニウム合金の一つである。また，この合金は鉄の含有量を低く抑えたプレミアム合金として知られ，強度と靭性がともに要求される航空機や自動車などの足回り部材に幅広く使用されている。この合金の組織は初晶α－Al相と共晶Al／Si柏で構成され，共晶Si粒子はAl母相内でサンゴ状に観察される。また，この合金は通常，溶体化処理から水焼入れ，自然時効処理，人工時効処理までを行うT6処理を施して使用されている。溶体化処理は，Al母相を過飽和固溶体とし，その後の人工時効処理によって析出強化させるために必要な熱処理である。一般的に高温で行われるため，溶体化処理中に共晶Si粒子の形態が変化し，合金の力学的特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。