韓国の高機能性磁性材料研究センターの発端と現況

摘要

昨年の日本応用磁気学会誌（Vol．27，No．9）の論説に韓国の最近の磁気の発展状況について李　 宅乗数授がポイントをっいた優れた論説を書いておられ，特に筆者としては付け加えることはないので，筆者の所属する国立忠両大学の高機能磁性材料研究所を中心に，宣伝もかねて雑談的に私事にわたることなどをも紹介をさせていただきたい．韓国に，組織的，系統的で，現代化された科学技術の研究が始まったのは1966年韓国科学技術研究院（KIST）のアメリカの援助指導のもとでの設立が契機であった．是非はともかく，理工系専門領域に限って言えば，当時は大学の役割は研究ではなく，教育中心主義が一般的な常識であった．KISTは科学技術の先進国である欧米に留学して，活躍していた多くの中堅研究者を呼び戻し，研究陣を構成した．また朴正解革命政府は科学技術の振興こそが経済活性化への道という考え方のもとに，KISTに多額の集中投資を惜しまなかった．その効果は数年でたちまち現れ，1970年のはじめごろから，分野によっては，欧米でも，高く評価されるような意欲的な研究の成果が生まれるようになった．この一事を見ても，韓国人は芸術面では優れているが，科学技術の方面には向いていないという俗説があり，日本人もかつては同じようなことを言われたことがあるらしいが，科学技術の分野に民族性や国民性があるとは思えない．同じ環境条件では有意差はないように思う．一方，磁性材料の研究は英国から帰国した姜　日求博士が1960年末にKISTの材料部門を担当してから，始まった．博士は若い有能な人材を集め，第一線で活躍できる研究者に育て上げて，本格的に研究を軌道に乗せ，基礎，応用の幅広い範囲で大きな研究成果を上げた．昨年の日本応用磁気学会誌（Vol．27，No．9）の論説に韓国の最近の磁気の発展状況について李　 宅乗数授がポイントをっいた優れた論説を書いておられ，特に筆者としては付け加えることはないので，筆者の所属する国立忠両大学の高機能磁性材料研究所を中心に，宣伝もかねて雑談的に私事にわたることなどをも紹介をさせていただきたい．韓国に，組織的，系統的で，現代化された科学技術の研究が始まったのは1966年韓国科学技術研究院（KIST）のアメリカの援助指導のもとでの設立が契機であった．是非はともかく，理工系専門領域に限って言えば，当時は大学の役割は研究ではなく，教育中心主義が一般的な常識であった．KISTは科学技術の先進国である欧米に留学して，活躍していた多くの中堅研究者を呼び戻し，研究陣を構成した．また朴正解革命政府は科学技術の振興こそが経済活性化への道という考え方のもとに，KISTに多額の集中投資を惜しまなかった．その効果は数年でたちまち現れ，1970年のはじめごろから，分野によっては，欧米でも，高く評価されるような意欲的な研究の成果が生まれるようになった．この一事を見ても，韓国人は芸術面では優れているが，科学技術の方面には向いていないという俗説があり，日本人もかつては同じようなことを言われたことがあるらしいが，科学技術の分野に民族性や国民性があるとは思えない．同じ環境条件では有意差はないように思う．一方，磁性材料の研究は英国から帰国した妻　日求博士が1960年末にKISTの材料部門を担当してから，始まった．博士は若い有能な人材を集め，第一線で活躍できる研究者に育て上げて，本格的に研究を軌道に乗せ，基礎，応用の幅広い範囲で大きな研究成果を上げた．妻　博士は韓国の磁性材料研究の生みの親であり，今もリーダーとして健在である．　 博士は韓国の磁性材料研究の生みの親であり，今もリーダーとして健在である．