偏平状センダスト粉末·ポリマー複合体の透磁率と伝導雑音抑制効果

摘要

偏平状Fe-Si-Al粉末·ポリマー複合体に双峰型のμ"分散をもたらす2つの磁気共鳴のうち，低周波側の磁気共鳴が発現する機構とその制御手段について，粉末が不定形から偏平状に変化する過程から考察し，以下の結論を得た。 1）鍛造初期段階では，偏平粉末と出発粉末に近い粗大な粉末が混在し，偏平粉末の表皮深さが粉末厚さ分布中に存在する。 その結果，未燒鈍状態のμ"分散は磁気共鳴による分散DIIと渦電流による分散DIが混在した周波数特性を示す。 一方，焼鈍後は偏平粉末の表皮深さが変化して渦電流による分散が支配的になり，磁気共鳴による分散が消失する。 2）分散DIIをもたらす磁気共鳴は，粉末が二次元的な形状に変化した事により発現する一軸的な形状異方性によるものである。 3）鍛造中期では，偏平粉末の占める割合が多くなり，磁気共鳴による分散DIIが支配的になり，42h鍛造した粉末を焼鈍処理することで，μ'＝95，μ"=30と複合磁性体としては極めて大きな最大透磁率が得られた。 また，分散DIとの混在により，急峻に立ち上がり1/fに近い傾きで減衰する伝導雑音の抑制に極めて好ましいμ"の周波数特性が得られた。 4）組成の異なるFe-Si-Al粉末からなる複合体を作製し，分散DIIを与える共鳴周波数fr_(DII)と，K_1およびλ_sとの関係を調べ，fr_(DII)がK_1およびλ_sに強く依存することを明らかにした。 5）得られた複合磁性体の伝導雑音抑制効果をマイクロストリップ線路を用いて調べ，GHz帯で優れた抑制効果を示すこと，およびその効果の大きさがパーミアンス虚部と周波数の積μ"·d·fから説明できる事を示した。