実働変動応力測定に基づくポンプ水車ランナの疲労き裂進展と点検手法の評価

摘要

揚水発電の役割は、信頼性の高いピーク電源の提供と深夜帯における需要創出に伴う負荷平準化にある。しかし、近年は周波数制御、瞬動予備力、ブラックスタート等、アンシラリーサービスの提供に対する期待が高くなっている。海外ではこのアンシラリーサービス機能を最大化する目的から、非常に低い発電出力で運転する事例もある。このような背景において、著者らが運転保守業務に参画しているフィリピン国のカラヤン揚水発電所でポンプ水車ランナ（材質はASTM：A743Gr．CA6NM、JIS：SCS6同等品）の4台中3台に大きなき裂が発見しされた。この原因究明と線形累積損傷則による評価については、既報においてなされている。本報は、疲労き裂進展量を実働応力計測結果と破壊力学に基づいて定量的に評価し、現行のランナ点検手法についてその妥当性を検討するものである。