江戸初期における蒸留器について

摘要

17世紀中頃から紅毛流医術の導入を支援していた幕府は、オランダ東インド会社に多数の新しい医薬品を注文し、納品された新薬を和·漢薬と比較して国内資源の調査を促すようになった。この動きは、1660年代後半に8代将軍吉宗が行なった「享保の改革」によく似た「薬草政策」へと発展し、日本初の西洋製薬技術移転にも繋がった。1667年に長崎奉行を通じて、出島商館長シックスおよびその後任者ランストに対し、「将軍と老中は、植物学と薬油蒸留に詳しい人物が日本へ派遣されることを望んでいる」との要請が伝えられ、蒸留に必要な装置一式とオランダの植物の種と生きた薬用植物が注文された。