現代左官事情＜その71＞「建築と左官」--19.静岡県松崎町岩科学校

摘要

西伊豆松崎町の中心から南に約3kmのところにある岩科学校は、明治13年に竣工した明治初期の学校である。日本では、甲府の旧睦沢学校（明治8年）、松本の旧開智学校（明治9年）などに次ぐ古いものとして知られている。この伊豆松崎は、左官の名工伊豆長ノしの出生地として、また長八の作品が多く残されている地としても有名である。この建物は、当時の名主であった佐藤源吉によって新築計画が進められ、設計施工は、地元大工棟梁で高木久五郎と旧岩科役場の棟梁であった菊池丑太郎の両雄の手で建設された。名主佐藤源吉は、文政12年（1829）岩科村指川に生まれ、教育に情熱を注ぐ人材として地元でも有名であった。学校建設計画実行のために、地元棟梁の高木久五取菊池丑太郎らに伊豆の函南·三島·沼津のそれぞれの学校建築様式を調べさせ、小学校の基本プランをまとめ上げ、建築工事に着手した。その、名主佐藤源吉の経歴としては、岩科学校創設前、松崎の盟友依田佐二平とともに謹申学舎私塾を開設していた。