レーザフラッシュ法熱拡散率測定の標準物質候補材料の検討

摘要

熱拡散率標準物質の候補材料として，黒色セラミックスの熱拡散率と比熱容量を調べた．厚さが異なる試料の熱拡散率が室温で約5%のばらつきの範囲で一致し，材料固有の熱拡散率を得ることが可能であった。室温において表面処理の有無により熱拡散率が変化しないことから，この黒色セラミックスは表面処理をせずにフラッシュ法で測定可能であることを確認した．熱拡散率は，室温～1100Kにおいて，約9×10~(-6)m~2/sから温度上昇に伴い約2×10~(-6)m~2/sへ減少した．昇温の前後での熱拡散率の変動は確認されず，安定であった．比熱容量は，室温から900Kの温度範囲において，0.8×10~(-3)J/(kg·K)から1.1×10~(-3)J/(kg·K)の値を示した．以上から、黒色セラミックスは，標準物質として利用できる可能性があると判断した。今後，標準物質または依頼試験の対象として検討を進める予定である．数種類の等方性黒鉛の熱拡散率を室温において測定し，等方性黒鉛の室温での熱拡散率は，1×10~(-5)m~2s(-1)オーダ内で広く分布していることが分かった．ばらつきが小さく，材料固有の熱拡散率を求めることができることを確認した．均質性が良く安定であり，表面処理を必要としない材料であるので，測定装置の妥当性評価時のニーズに合わせて選択し，依頼試験等で値付けして標準として利用することが有効である．