XAFS測定の最前線一軽薄短小の30年と次世代光源への期待

摘要

表面科学の最前線の一つはナノ科学である。ナノ領域の科学とその応用は19世紀たとえば，ファラデイーの金コロイドでよく知られたコロイド科学として存在していたが，今日の形になるためには，ナノ領域のキャラクタリゼーション手法の確立と原子オーダの精密さをもつ調製法の発展が不可欠であった。電子顕微鏡を始め様々なキャラクタリゼーション法が20世紀に開発された。その中で，XAFS（X－ray absorption fine structure）はX線吸収原子周辺の局所構造に関する原子レベル情報を与え，ナノ領域の表面科学に大きく寄与した。私たちがXAFSを使えるようになった1980年台初頭，XAFSは数cm~2の均一をサンプルを1時間かけて測定していた。今日ナノ物質をあるがまま測定する方向へとXAFSは発展している。SPring－8など，10nmrad以下の低エミッタンスをもつ第3世代高輝度放射光源が建設され，こうしたナノ領域への本格的なアプローチが可能になった。そのアプローチを一言でまとめると軽薄短小になる。今，XFELやERLといった第4世代の超高輝度·短パルス光源が実現し，あるいは，実現しようとしている。今後，私たちはXAFSを通して，より精密なナノ領域の知識を手に入れるであろう。