総需要は10.6％減，製造業は6.5％減プラスは中部と九州，業種は鉄鋼

摘要

26年度上期の総需要電力量は4,728億kWh弱と集計され，前年同期を2.5％も下回るマイナス成長に終わった。4月実施の消費増税が需要の足を引っ張ると当初から予想されてはいた。しかし，7～9月に盛り返し上期全体では横ばいからプラス成長が見込まれていた。2.5％ものマイナス成長は想定外で，関係者にとってはショックだったに違いない。想定外の要因は冷夏にあったと考えられる。前年まで2年連続の記録的な猛暑が日本列島を襲っていただけに，気象庁の暑い夏の予報を覆す冷夏が，消費増税のマイナス影響に追い打ちをかける形になったといえよう。用途別の内訳は，規制部門の電灯電力が5.8％減，自由化部門の特定規模需要が1.2％減，産業界の自家発自家消費が0.3％増で，民生部門で発生した6％近い大幅なマイナスが全体の足を引っ張ったと同時に，それは前年との大きな気温差に起因した一過性の結果であると考えられる。そのため，特定規模需要の1.2％減から気温差の影響を受けているビル用業務用の一過性のマイナスを差し引いた産業用は前年に近い水準まで盛り返した。製造業の足取りを振り返ると，製造業11業種の総需要は前年の0.5％減に終わり，増税前仮需で2.7％増へ急回復した前年度下期からはマイナスへ後退したが，前年同期の1.4％減に比べるとマイナス幅が縮まっている。製造業も多少は気温の影響を受けていると考えられるため，製造業の実力は前年並みだったといえよう。つまり，震災の影響をモロに受けた23年を含めて4年目を迎えた今年の産業用需要実勢が，ようやく安定してきたとも判断できる。そのため，産業用の電力需要が震災によってどう変化したか，26年度上期の需要を震災前の22年度上期と比較してみたくなった。