メキシコ湾原油流出事故とBPの社会的責任

摘要

石油メジャーBPのメキシコ湾大水深油田マコンドの原油暴噴事故は7月16日，ようやく原油流出がほぼ止まり，事後処理という新たな局面に入った。掘削リグ＝ディープウオーターホライズンが爆発して沈没，11名の死者を出したのが4月20日だった。それからほぼ3カ月間，原油は絶え間なくメキシコ湾へと流出を続けた。7月16日までにその数量は450万バーレルになったといわれている。これほ，1989年にアラスカ海域でエクソンのタンカー，バルディーズ号が座礁して流出した原油量25万バーレルの18倍にも達した。当初，マコンド油田からの原油流出量は5,000バーレル／日といわれていた。それもBPは1,000バーレル／日程度ではないかとみられるといっていたのを，米国海洋大気局（NOAA）が空から海域の汚染の広がりを観察して「少なくとも5,000バーレル／日ではないか」と発表したものをBPも採用·修正したものだった。しかしながら，日を追ってそんな量ではすまないことが次第に明らかになり，6万バーレル／日程度がオーソライズされた流出量とみられるようになった。もちろん，これを上回る観測もある。ともかく過去に例をみない大量の原油が流出し，海域を広く汚染。生態系に甚大な被害を及ぼしたばかりか，この湾での漁業で生計を立てている人たち約20万人の生活を奮ってしまった。世界中から掻き集めたオイルフェンスで原油の拡散を防いでいたものの，一部は米国のミシシッピ州などの海岸へと辿りついている。事故原因などの調査はまだほとんど進んでいないのが実情で，各種の被害·損害額や原油回収·噴出停止等に要する費用は300億ドルともいわれているが，とてもそんな額では収まらないだろうとみられている。