QCサークルは社会科学でどう論じられてきたか--産業·労働社会学の視点から

摘要

本稿は産業·労働社会学者による代表的な主張ではないし，ましてや社会科学者の典型的なQCサークル理解でもないかもしれない·筆者の理解では，QCサークルは日本の職場力の底上げを図ってきたし，各支部や各地区は企業を超えた，貴重な情報交換の場を提供してきた．近年ソーシャル·キャピタル（社会関係資本）ということばが，社会学を含め社会科学の諸分野で脚光を浴びてい．社会関係の網の目や人々の集いやすい環境，それらの質が個人や社会に社会的·経済的な恩恵をもたらしているという考えかたである．QCサークルは職場レベルでも企業間レベルでも，貴重なソーシャル·キャピタルを構築してきたというのが筆者の仮説である．成果主義や能力主義という発想は，優秀な人々を引き上げることのみに関心が向かいがちである．ごく普通に働く人々が互いに知恵を出し合って，みんなで一緒になって育っていく仕組みとして，QCサークルにも改めて光が当てられるべきである．