黒鉛炉原子吸光法による鉄鋼中微量元素定量における測定条件の最適化とその評価

摘要

近年、高純度鉄や高清浄鋼の研究ならびにそれらの溶製技術の開発等に関連して、化学分析における定量下限および分析精度の向上が強く要望されている.更に、化学分析で使用する試薬種によっては有害性が指摘され、その解決が急務とされている.そこで、金属材料中の微量元素定量に広く利用されつつある黒鉛炉原子吸光法の適用を検討した.本研究では超微量分析で問題となる検量線の作成法や試料中の偏析等を考慮し、酸分解試料溶液直接導入法で行った。超微量元素定量においては特に使用する試薬や器具等からの汚染が問題となる.それらの汚染が軽減できること、更に、迅速化という観点から、煩雑な前処理を省いて少量の酸による分解のみの最小限の前処理とする試料の酸分解溶液直接導入一黒鉛炉原子吸光法による鋼中微量元素定量法の確立を本研究の目的とした.本研究では、鉄鋼に含有する5種類の主に低融点元素について、より高感度な定量法の確立を目的とし、分析元素の無損失灰化法と高効率原子化法を検討した.この場合、各元素の測定条件、灰化時におけるパージガスの選択、黒鉛炉の選定、バックグラウンド補正の有無等の最適化が因子となる。 更に、試料溶液直接導入法による検出下限の向上には高濃度試料溶液の適用が必要で、その検討を行った。 各分析元素の最適測定条件を選定することにより、高濃度試料溶液にも適用できる高感度で迅速な定量法を確立した。 更に、得られた加熱条件の評価法として、本法で使用したのと同型の黒鉛炉を用いた電気加熱気化導入－ICP量分析法により、各分析元素の全加熱過程の蒸発状態を観察した。 その結果、いずれの元素も原子化ステップのみで観測され加熱条件の最適性を確認した。