微細粒子の肺への影響の動向

摘要

微細粒子の肺への影響は、以前はミクロンサイズの微細粒子がその主たる対象であった。 しかしながら、最近の動向においてクローズアップされてきたのが超微粒子（UFPあるいはナノ粒子と呼ばれる粒子がこれに相当する）の健康影響である。 1990年代以降の多くの疫学調査の結果、呼吸器疾患や心臓血管疾患を持つ高齢者グループ（感受性の高い集団）において、微細な大気中粉じん（PM_（2.5）：粒子径2．5 mu m以下の粒子）の汚染増加に伴い、死亡率や曜患率の上昇などより深刻な生体影響がもたらされていることが報告された。排気ガスなどによる環境中のPM_(2.5)曝露は、作業現場における微粒子曝露よりはるかに微量な曝露であるので、一般の大気濃度で生体影響を及ぼすか否かは議論がある鱒ゞ、いくつかの知見により、低い濃度のUFP曝露でも生体影響を生じる可能性が示唆された。 さらに、今世紀にをり技術革新によりナノサイズの粒径のUFPの工業生産が飛躍的に増加するようになり、新たに開発創造されたナノ粒子（フラーレン、カーボンナノチューブなど）の産業現場あるいは環境中における健康影響が問題視されるに至っている。