有機ケミカルハイドライド法脱水素触媒の開発

摘要

水素の貯蔵・輸送に芳香族化合物の水素化及び脱水素反応を用いる有機ケミカルハイドライド法は，水素の重量密度及び体積密度ともに高く，常圧で水素の貯蔵・輸送が可能であることから潜在的なリスクが少ない安全な方法である．また，水素の貯蔵・輸送が従来の石油化学製品として実施できることもメリットである．しかしながら，この方法は脱水素触媒の性能と安定性が十分でないために，技術的に確立されていない．千代田化工建設㈱は，簡便な固定床で十分な安定性と性能をもって作動する脱水素触媒を開発した．この触媒は，320℃，常圧，LHSV：2.0h~(-1)の条件下に，原料とともに5～20mol％の水素をco-feedする現実的な反応操作によって，メチルシクロヘキサン（MCH）転化率：＞95％，トルエン選択率：＞99.9％，水素発生速度：＞1000Ncc/h/cc-catで水素を発生することができる．また，製油所，製鐵プラントおよび石油化学プラントなどに潜在する低品位な水素を利用するスキームと海外の天然ガス田において水素製造及び水添を実施したケミカルハイドライドを海上輸送する将来構想についても検討した．