Mutant HBVの分子生物学Pre-C/C領域Pre-S/S領域およびⅩ領域遺伝子の変異

摘要

Pre-C/C領域, Pre-S/S領域, Ⅹ領域, CP領域,変異B型肝炎ウイルス(HBV)感染には様々な病態が存在するが,急性肝炎と慢性肝炎に大別することができる.成人の急性肝炎は大部分が一過性感染で終息するが,一部の症例で劇症肝炎に進展する.また母子感染や幼少時の感染では,大部分が無症候性キャリアとなるが10%程度は慢性肝炎となり更に肝硬変,肝細胞癌へと進展していくこともある.これらの病態は感染免疫の構成要素であるウイルス側の因子と,ホスト側の因子の複雑な相互作用により生じてくるものと考えられる.本稿では特にウイルス側の因子に注目し,HBVのPre-C/C領域, Pre-S/S領域およびⅩ領域遺伝子の変異が,このような病態にどのように関連しているのかを報告する.