ドライバディストラクション評価の代替手法としての車線変更テストの妥当性に関する検討－課題に対するドライバの慣れの影響

摘要

ISO TC22/SC13/WG8（車載装置のヒューマンインターフェイスに関する標準化を担当）にて，車載機器からの情報取得や操作により生じるドライバのディストラクションを評価する代替手法として，車線変更テスト(LCT; Lane Change Test)がNWI段階（New Work Item Proposal；新規提案の検討段階）で議論されている．これは二重課題法の一種であり，パーソナルコンピュータ(PC)上に設定された模擬車線変更課題を一次タスク，評価対象とする車載機器課題を二次タスクと位置づけ，両者を同時に実施した際のLCT成績から，車載機器課題によるディストラクションの程度を推定するものである．筆者らの前報では，視認操作課題を評価対象（二次タスク）とした場合のLCTの有用性を調査した．その結果，LCTならびに視認操作課題に習熟した被験者では，ISOにて別に審議されているOcclusion法（視認操作に要する時間を視界遮断状況にて測定する方法）に比して，評価対象課題間の差の感受性が小さいことが示された．LCTの成績は，ドライバ特性の違いによる影響を大きく受ける可能性がある．また，評価手法としての有用性を議論するためには，実車走行時の安全性に係わるデータとの関係を把握する必要がある．本報では，LCTおよび二次タスクへのドライバの慣れの違いがLCT成績へ及ぼす影響を調査した．また，実車走行時のデータと比較し，評価手法としてのLCTの妥当性を検討した．