種々のステンレス鋼への炭素薄膜被覆と固体高分子形燃料電池用セパレータ材料への適用

摘要

炭素材料は化学的に安定であり，たとえPEFC内で腐食反応が進行したとしても，二酸化炭素などの気体しか生成しないため，電解質膜を劣化させることはない。そこで，われわれは炭素と金属に注目し，金属に炭素薄膜被覆を行うことにより，金属の特性を活かしたまま導電性および耐食性を付与することを目指した。これまで，炭素鋼あるいはステンレス鋼へプラズマ化学気相析出（CVD）法により炭素薄膜を被覆して，その耐食性を評価してきた。SUS304を用いた結果，良好な耐食性を示す材料が作製できたが，ステンレス鋼は耐食性や強度など諸性質に応じてさまざまな種類があり，その構造が炭素薄膜の析出形態に影響を与えると考えられる。そこで，本研究ではSUS304と同様のオーステナイト系ステンレス鋼で耐孔食性を高めるためにMoを少量含んだSUS316とフェライト系ステンレス鋼でNiを含まず比較的安価なSUS430の2種に注目し，SUS304を含めた3種類のステンレス鋼に炭素薄膜被覆を行いPEFC用金属セパレータ材料を作製し，ステンレス鋼種と炭素薄膜被覆により付与される耐食性の関係について調べた。