特殊鋼：その変遷と今後の夢--III．各種特殊鋼材料の変遷--2．構造用鋼 --（3）非調質鋼

摘要

非調質鋼は、焼入焼もどし（調質）を行わずに所定の強度が確保できるため、部品の熱処理費低減、工程簡略化による納期短縮、生産性向上などの大きなコスト低減効果が期待でき、更に熱処理省略によるCO_2排出低減など、環境貢献技術として自動車産業などを中心に、現在広く採用されている。図1に自動車部品への適用例を示す。非調質鋼の研究は1972年ごろ西独にて始められた1）。日本においても1970年代後半から積極的に研究が進められ、1980年前後に自動車用クランクシャフなどにて実用化が開始された。当初の非調質鋼は、強度は確保可能なものの靭性が調質鋼に対して劣るため、適用部品は限られていたが、数々の研究開発によって靭性が向上され、足回り部品への適用も進んでいった。本稿では自動車部品における非調質鋼の変遷を述べる。