核燃料工学の基礎－軽水炉燃料を中心に 第5回 燃料のふるまい

摘要

軽水炉では，第1図の蛍石型結晶構造を持つUO{sub}2，およびそれに可燃性核的毒物であるGd{sub}2O{sub}3やプルサーマル用燃料用にPuO{sub}2を固溶させた混合酸化物を円柱状に成形し，焼き固めた燃料ペレットが使用される。 UO{sub}2は温度と雰囲気中の酸素分圧に依存してUO{sub}(2±X)の不定比組成を示すため，焼結雰囲気を還元性にすることにより焼結ペレットのO/U 比を2.0に近い値に調整している。 定比組成のUO{sub}2 の格子定数は0.570nmであり，理論密度は10.95g /cm{sup}3である。 UO{sub}2格子中の酸素およびウラン原子の拡散は，ペレット焼結特性および各種照射下でのペレットふるまい（クリープ，ペレットの体積が減少する焼きしまり，核分裂ガスの気泡成長によるスエリング等）に大きな影響を及ぼす。 特に，酸化物燃料の拡散では，これらの拡散律速視象を支配している金属原子の拡散係数が金属対酸素原子比（O/M比）に大きく依存すること（第2図），また1,000℃以下の低温で温度に依存せず核分裂速度，すなわち格子欠陥生成速度に比例した照射誘起拡散がみられることに注目すべきである。