産業用循環加温式高温ヒートポンプの開発－最高出口温度90℃での温水循環加温が可能な空気熱源式ヒートポンプ

摘要

近年，ヒートポンプ機器は省エネ，ランニングコスト低減の切り札として空調用途のみならず，給湯機器への展開が進んでいる．しかしながら産業用熱源分野へのヒートポンプの普及は十分とは言えない現状である．工場では製造工程によって様々な加熱処理があるが，産業用熱源としては蒸気ポイラが広く用いられている．ボイラは一般的に動力室に集中設置されており，熱の利用（需要）箇所まで長い蒸気配管を用いて蒸気を搬送するため，配管での熱損失が発生するという課題がある．また，直接蒸気を必要とする場合もある一方で温水として利用する工程も多く，温水温度90℃以下で且つ槽の温度を一定に保つ循環加温用途に用いられる熱量は，国内市場のみで年間約6,700万GJにものぼる［1］．近年では，産業用ヒートポンプの開発，導入例も見られるようになってきたが，市場からは循環水の高温化，ヒートポンプの高効率化，製造工程近傍に設置できるコンパクト化や設置容易化の要望が多く上がっている．これらの要望に応えるべく，著者らは空気熱源式循環加温ヒートポンプの開発を行った．