高度加工を実現する制振合金の活用

摘要

最近工作機械の加工精度の向上，精密測定機の測定精度向上，さらに自動車·住宅などの住環境の向上のために，さまざまな振動制御の方法が検討される傾向が強まっており，目的達成のために設計の変更，材料の変更や改良など各種の手段が試されている。従来，材料については防振ゴムや制振樹脂を鉄板で挟んだ構造の制振鋼板の機械装置などへの適用が主体であったが，強度の低さや適用周波数域の低さの問題があり，使用範囲が限定されていた。一方，制振合金は前者に対して相対的に高い強度や高周波域でも使用できる利点があったが，減衰能自体が防振ゴムや制振鋼板よりもかなり小さいという問題を抱えていた。しかし最近，制振合金の改良や使用方法の最適化により減衰能自体が向上したことと金属材料固有の高い強度を生かすことで，応用範囲が広がりつつある。特に大型化が著しい工作機械の部門では制振材と言えどもかなり高い強度や寿命が必要であり，制振合金の適用範囲は飛躍的に広がりつつある。また，従来の設計による構造制振では対応できる振動周波数が狭いという問題があったが，材料での振動対策ではかなり広い範囲の周波数帯域まで対応が可能であるということも，制振合金の普及の大きな理由となっている。