切削シミュレーションソフト「AdvantEdge」とその使い方

摘要

シミュレーションでは，解析目的を明確にし，その目的に応じた解析の出力結果を選び，調査したい項目からの影響を検討する。 工具の寿命を延ばす工具形状の例を考えてみると，工具の寿命を評価する出力結果として温度が最初に考えられる。 工具の温度が上がりすぎるような場合は，工具の摩耗が進み寿命が低下すると一般的に言われている。 また，工具の応力（切削力も含め）も大きくなれば，工具の欠けや疲労破壊がおこる場合もある。検討項目は工具形状であるから，工具形状を変更して解析を実施し，出力結果の温度や応力などを比較する。 もちろん，上記の観点からは温度や応力の値は小さければ小さいほどいいのではあるが，切削量をある程度確保する以上，温度や応力は上昇する。 つまり，どこまで許容できるかということが問題になる。 これは，過去の切削事例の現象そのものをシミュレーションした結果から判断することによって設定する。 温度や応力の許容値以下になるような工具の形状を探し出せば，それによってさらに高速な切削が可能となるような工具形状の開発につながる。 もちろん，一つの解析結果だけ（たとえば温度だけ，あるいは応力だけ）で寿命や摩耗を判断するのは問題だが，一つの情報としては十分な価値があると考える。 これまで過去の経験や調査段階での実験で得られたものを基に切削過程を改善していたが，それに新たにシミュレーションによる情報を追加することにより，さらなる改善の可能性が増えると考えられ，その点からシミュレーションは切削分野においても非常に有用なツールであるといえる。