環境問題に対応する生産加工技術：MQL用加工油に求められる性能と使い方

摘要

現在，オゾン層の破壊防止や温暖化防止などの環境問題に関する地球規模での取り組みが高まっている。 国内においても廃棄物処理法の改正PRTR（環境汚染物質排出·移動量登録）の法制化，ダイオキシン類対策特別措置法の制定など，環境保護を目的とした規制が強化されつつある。 切削油に関しても環境対応重視への変革を迫られており，油剤の構成成分として利用可能な化学物質の種類·量は大幅に制限される傾向にある。 このような背景により，切削油をまったく使わないドライ加工，ならびに1時間当たりに数mLから数十mLというごく微量の潤滑油を噴霧して加工を行なう，いわゆるMQL (Minimal quantity lubrication)方式によるセミドライ加工が脚光を浴びている。 特に，MQL加工では仕上げ精度などの加工性能を維持した上で油剤の使用量を大幅に減少できることから，1990年代前半よりドイツ，日本を中心に盛んに研究開発が行なわれてきた。 本稿では，MQLに最適な油剤として広く使われているユニカットジネンシリーズの諸性能を中心に，MQL加工油に求められる安定性などの2次的な性能や切削性能について解説する。