球面調和関数領域のMVビームフォーマによる正12面体スピーカアレイの指向性制御

摘要

本稿では球面スピーカアレイを用いた三次元指向性制御について述べる。既報の球面調和関数展開に基づく指向性のフィルタ設計では，目的とする放射方向の音だけでなく，目的方向の逆方向の音圧も大きくなっていた。これは球面調和関数展開によるフィルタ設計では単純な指向性パターンしか作れないためである。一方，マイクロホンアレイ処理で用いられるMV法によりフィルタ設計を行うことで，逆方向の音圧を小さくすることができる。しかし，座標領域のMVビームフォーマによるフィルタ設計で様々な方向へ指向性ビームを回転させようとすると，全ての方向におけるフィルタ設計をし直さなければならない。そこで，球面調和関数領域でのMV法によるフィルタ設計手法を検討する。この方法では，代表的に求めた一つのフィルタを他の方向にも適用することができる。これにより，逆方向の音圧を抑えつつ，フィルタ設計における計算時間を短縮することができる。