歌唱合成システムの実現を目的とした高品質音声分析合成法の提案

摘要

本稿では，歌唱合成を目的とした高品質音声分析合成を実現する新方式を提案し，その原理について述べる．提案する方式は，従来のVocoderと同様に，音声を基本周波数とスペクトル包格に分解する分析法から構成される．一般的なVocoderでは，有声音·無声音に関わらずスペクトル包絡の推定を行い，無声音の合成時はホワイトノイズを励起信号として用いることが一般的である．しかしながら，歌唱合成のような用途では，音高の操作や歌唱フォルマントの操作など，母音に関して基本周波数·スペクトル包絡の加工が行われる一方，子音の詳細な加工が行われることは少ない．提案方式では，計算コストの削減と品質の向上を図るため，無声音について入力波形をそのまま再利用することとする．これは，基本周波数·スペクトル包絡に加え，元波形を併用するハイブリッド型のVocoderであり，母音制御の柔軟性を残しつつ，高い品質での子音合成が期待できる．本稿では，本方式に採用する基本周波数推定法·スペクトル包絡推定法について述べ，客観評価により有効性を示す．