サンゴ骨格を用いた古海洋環境の復元

摘要

サンゴはイソギンチャクなどと同様の腔腸動物門であるが，多数のポリプからサンゴ群体を形成し，外骨格として炭酸カルシウムの骨格を形成する。 これが他の腔腸動物との大きな遠いであり，サンゴの特質である。 そして特に海水温20℃以盟の貧栄養塩海域の浅瀬に棲息し，サンゴ礁を構成するサンゴを造礁サンゴと呼ぶ。 造礁サンゴのポリプには，細胞内共生の形で共生藻が多数存在し，サンゴはその共生藻による光合成産物をエネルギー源として利用している。 サンゴは海水中のカルシウムイオンと炭酸水素イオンを用いて炭酸カルシウムの骨格を形成するので，共生藻の光合成で二酸化炭素が吸収され，周辺海水のpH値が上昇することで炭酸カルシウムの飽和度が増加し，サンゴ骨格の成長はより促進される。 またサンゴは骨格を作る際に，カルシウムイオンなどと同時に周辺海水の水温·塩分などの情報や各種化学成分もその骨格に取り込んでいる·ハマサンゴ属（Genus Porites）のような塊状サンゴでは，サンゴ骨格の成長量は1年に約1～2cmであり，中には直径3～5mにまでも成長する群休もある。 このような群体のサンゴ骨格には，骨格の成長期間に応じて，過去数百年間の海水中の各種成分が記録されていると考えられる。