2009年7月25日地質標本館前で発生した火砕流「的」現象

摘要

これまで人類の進歩において，障壁となって立ちはだかってきたものは，超音速，超高圧，超微粒子，極低温などがあるが，「超高温」は身近なようで実はそうではない．通常のコンロや焚き火などで炎の温度は1，000℃以上であるが，それを利用する場合は調理器異などを介して高々200℃以下の温度を利用しているに過ぎない.しばしば天ぷら鍋で火災が起きるのは，実は200℃以上の高温領域での炎のふるまいが良く理解されていないことを示唆する．例年，一般公開で「キッチン火山学」に取り組んできたわれわれ実験火山学グループであるが，これまでの実験は水槽や常温でのものに留まっていた．火山現象の本質である熱の問題をこれまでないがしろにしてきたわけであり，メンバーには内心憧悔たる思いがあったのである．そんなある初夏の夕暮れ時，1人のメンバーが論文（高橋ほか，1994）のコピーを持ってきた．そこには重曹を使って火砕流のアナログ実験を行い，流体力学的解析をしたことがサラリと書いてあった．