『串木野金山』の思い出

摘要

かつてこの金山に勤務し三井金属鉱業（株）に長く勤務した私としては，串木野金山に対する愛着と思い出は甚だ多いが，私が勤務した昭和28年～33年の5年間の中で見たり聞いたり，また，実感した串木野に住む方々の考え方，言葉（鹿児島弁），当時の上司，同僚，部下の事，宴会などで良く利用した料理屋の方々，買物などに利用させて貰った商家の人々等の記憶は鮮やかに蘇り忘れる事は出来ない。 串木野金山は，かつては日本一の産金量を誇る世界でも有数の金山でジパング·ゴールドと称され，世界の憧れのゴールド日本の一翼を担ったものであったと言われる。 徳川時代から我が国では佐渡金山等と共に幕府が最も重要視した金山地帯でもあった。当時の薩摩藩主であった島津家の支配下にあり，各所で高品位金鉱が狸掘りされていた事は想像に難くない。 但し採掘技術は低く，製煉加工技術に至っては皆無に近かったと思われ，大規模採掘並びにシアン化合物を使用しての青化製煉は，明治末期に三井鉱山合名会社が鉱区を買収してからの事である。