放射性炭素同位体とウラン系列核種を用いた古海洋学研究

摘要

地球表層に分布する放射性核種は，過去の地球科学的イベントのタイミングを決める際に広く用いられている。その中でも放射性炭素同位体を用いた年代測定法（~（14）C法）は，第四紀後期の地球科学や考古学などの分野において，最もポピュラーな年代測定法である。 ところが，この~（14）C法は，地球科学的な「時計」として一定の速度で動いているわけではなく，その生成率，地球表層のリザーバー間での分布などによって，違った「速度」で動いていることがわかっている。一方で，ウラン同位体の地球表層での非平衡を用いた年代測定法は，そのような外的要因に影響されないため，過去300万年間の年代測定に最も適した方法である。 本論文では，~（14）Cを年代測定として使用するのではなく，気候変動などに起因したリザーバー間での分布を調べることのできるトレーサーとしての役割を使い，U-Th年代測定と組み合わせることによって，特にグローバルな過去の気候および海洋環境の変動を調べる方法について述べることにする。