海洋環境を記録する有孔虫炭酸塩殻--その2，炭素同位体比について

摘要

炭素循環研究は，地球温暖化問題に直接関係しているとともに，気候変動を通じて砂漠化問題などの水循環の課超にも通じている。 このように炭素循環が地球環境のさまざまな問題に影響を与えている理由の一つは，炭素化合物の一つである二酸化炭素が，大気中で太陽エネルギーの一部を吸収し，地球表層のエネルギーバランスに影響を与えているからである。 通常，炭素循環の研究では，炭素がどこにどの位存在しているのか，また，あるリザーバー（貯蔵所）から別のリザーバーにどの位炭素が移動しているのか，といったことに重点が置かれているが，同位体は貯蔵量，移動量，その仕組みについて貴重な束縛条件を与えてくれる。 炭素には3つの同位体が知られている。 同位体とは，陽子の数が同じで，中性子の数が異なったもので，炭素の場合には，存在量が最も多い~（12）C（存在比0．98888），存在比1．112％の~（13）Cおよび存在比1．2×10~（-10）％の放射性核種~（14）Cがある。 この中で，最後の~（14）Cは放射性核種で，地球の大気上層で宇宙線の作用で絶えず極微量の放射性同位体として生成し，半減期5，730±40年で時間とともに消滅している。