スケーラブル映像符号化におけるエラー隠ぺい方法の一検討

摘要

エラーを含む符号化データを再生する場合，ブロックノイズの発生，再生の遅延，フレーム飛びといった主観画質を大きく低下させる現象を避けるために，エラー隠ぺい技術の利用が不可欠である．本稿では，H.264/AVC拡張規格SVCに準拠した符号化データに対する新しいエラー隠ぺい方法を提案する．スケーラビリディを持たないデータを対象とした従来のエラー隠ぺい方法では，過去のフレームのデータのみを参考に映像を作り出さざるを得ないため，被写体の動きが大きい場合や，エラーを含む時間が長く連続する場合に効果が低下してしまう．提案手法では，SVCの階層性を利用し，たとえ拡張階層にエラーが発生しても，基本階層の情報を参考に隠ぺいを行う．すでに基本階層の復号信号を拡大し，その拡大信号を隠ぺいに利用する従来技術は提案されている．しかし，本稿の提案手法では，局所領域の動き情報を推定し，その推定結果に応じて，過去の情報に基づくか，基本階層の情報に基づくかを決定する適応処理を加えており，さらなる画質向上が期待できる．シミュレーションにより，従来の基本階層を拡大し利用する方法と比較して，最大0.93dBの性能向上を得た．