Mn_(2.5)CoNi_(2.5)酸化物系焼結体の熱処理過程における結晶変化とその電気的特性

摘要

本研究は，Mn：Co：Ni＝2.5：1.0：2.5の組成比をもつ酸化物を用いて1200℃で焼結させた後の1000℃での熱処理時間を延長させることによって，焼結体の結晶相を単一相の立方晶スピネル構造にすることができるか否か，また単一相が得られない場合でも相分離の状態を固定化することができれば，安定した電気的特性が得られるのではないかと考え検討を行ったものである。 結果として，熱処理時間を延長させても岩塩型結晶が消滅せず，立方晶スピネル単一相への移行は不可能であることが明らかとなった。 しかし，25h以上の熱処理で結晶相の量的変動は認められなくなり，同時に安定した抵抗，B定数，C定数をもつサーミスタを得ることができた。 このことは立方晶スピネル単一相の生成に固執することなく，安定した電気的特性を有するサーミスタを提供できることを示すものであり，製造設備や工程が単純化できるなど，価格的にも有利であると考えられた。