裁判外紛争処理（ADR）と医療メディエータ一について教えてください

摘要

医療事故紛争や薬害紛争の解決にあたって，伝統的な裁判制度に限界があることが指摘されるようになってきました。時間やコストがかかるというだけでなく，そもそも事実究明自体が困難なこと，因果関係や過失など専門的にみてさえ判断が明確にできないこと，対立型の裁判構造では被害者の心理的なケアができず，むしろ対立がエスカレートすることなどです。そうしたなかで，合意による紛争解決を目的とする裁判外の紛争処理の仕組みを作ろうという議論が出てきました。これがADR（alternativedisputeresolution）です。しかし，ADRと一口にいっても，当事者が向きあって話すことで心理的·関係的対立の調整を図ろうとする対話型ADRから，賠償問題など法的観点を含めて解決案を提示し合意を調達しようとする形まで多様なものがあります。裁判と違って，当事者双方が合意してはじめて手続きが開始されます。