子宮内膜症

摘要

子宮内膜は，月経時に剥がれて子宮から膣へ出ていく。その際，月経血とともに子宮内膜の一部が子宮から逆流し て卵巣，卵管，腹腔あるいは直腸表面の腹膜など子宮以外の臓器に接着することがある。しかし，これを排除できな いために生着し，増殖すると子宮内膜症が形成されると考えられている.症状は，月経痛，慢性骨盤痛，月経時以外の下腹部痛，腰痛，性交痛，不妊，月経過多，排便痛などである。発症機序には，局所の炎症によるサイト力イン.ケモカインの産生増加がァラキドン酸カスケ一ドを活性化する結果，疼痛関連物質のプロスタグランジン(PG)やロイコトリェン（LT)の産生が増加して疼痛を引き起こし，子宮平滑筋を収縮するほか，線維芽細胞増生および膠原線維増加につながり，線維化.癒着形成による組織間の牽引，病変による組織?神経損傷.圧迫，局所の 出血による内圧上昇，精神的要因が考えられている3)气特に，急性疼痛が長く続くと，精神的?心理的要素が加わ り慢性痛に移行し，痛みが複雑化して治療が困難になる場合がある3)。また，炎症の中心部である子宮内膜腺周囲の 間質は増生して肥厚し，線維化，血管新生とともに平滑筋や神経も新生する。子宮内膜症の疼痛は，新生した平滑筋 が収縮することによつて発生する知覚過敏の機序も考えられている。