がん患者の就労支援わが国の現状と今後の課題

摘要

「がんは日本人の死因の第1位である」，「日本人の2人に1人が一生のどこかでがんになり，3 人に1人ががんで亡くなる丄これらは一般市民 向けのがん講座などで頻繁に聞かれる表現であ る.このように，がんという病気がわれわれにと つて極めて身近な病気であることが強調され，そ の予防や早期発見に向けた公衆衛生活動が広く展 開されてきた.しかし，実際にがんと診断された 後の人生を充実させるための考察や支援実践は， 予防活動と比較するとこれまではるかに手薄であ つたといわざるを得ない.がんの診断?治療後に 社会生活を送るプロセス（がんサバイバ一シップ） に関する研究は国際的にも注目され，中でもがん 患者や家族の就労支援は重要トピックとされてい る.就労は収入の源であるだけでなく，多くの 人にとって生きがいや自己のアイデンティティと いう意味も持つ.また，患者本人だけでなく， 看病する家族の就労にも多大な影響がある.