高齢者大腿骨骨折患者における術前臥床期間と凝固線溶系との関係

摘要

70歳以上の大腿骨頸部骨折患者34症例の手術までの期間と凝固線溶系との関係について検討した。 受傷から手術までの期間により，通常（受傷後3日以内），待機（受傷後4－7日），長期間待機（受傷後8日以降）手術群の3群に分類した。 通常手術群では，トロンビンーアンチトロンビン複合体濃度が他の群に比べ有意に高く，長期待機手術群ではほぼ正常化した。 D－dimer濃度は通常手術群で有意に高かったが，待機·長期間待機手術群においても高値を持続した。 高齢者大腿骨頸部骨折患者の急性期には凝固活性が生じ，その後の長期安静臥床は血栓症を生じる可能性が示唆されたため，修復手術に際しては血栓症が生じる可能性を念頭においた麻酔管理が重要である。