拡散反射分光法に基づく生体組織光学特性値の推定と脳機能イメージングへの応用

摘要

脳組織の光学特性は，血液循環や組織·細胞レベルでの代謝により時·空間的に変動している．血液循環に関連する光学特性の変化は，脳血流量の増減による光吸収変化，赤血球由来の光散乱変化や血中ヘモグロビンの酸素化-脱酸素化に伴う光吸収変化であり，組織·細胞レベルでの代謝による光学特性の変化は，チトクローム類の酸化-還元による光吸収変化や細胞および細胞内小器官の形態変化により生じる光散乱変化であるとされている．丸ごとの生体脳の光学特性値にはこれらの全てが反映されていると考えられる［1］．拡散光スペクトルを利用した計測法では，丸ごとの生体や生きた細胞組織から得られる光学特性値の分光情報を解析することで，血行動態や組織形態変化などの生体機能に関わる情報を評価することができる．中でも，定常白色光源を用いた拡散反射分光法（Diffuse reflectance Spectroscopy，DRS）は簡易·安価な計測システムで実現可能であり，イメージングへの展開も容易である．